漢方の疑問質問にお答えいたします

漢方

漢方に関する疑問質問にお答えいたします。漢方への不安を払拭し、安心してご利用いただけると幸いです。

漢方エキス製剤とは?

漢方薬を煎じた液を濃縮したあとに、水分を蒸発させてエキス成分を取り出し、乳糖などを加えて顆粒状にしたり、カプセルに入れたり錠剤にしたものを「漢方エキス製剤」と言います。コーヒーに例えるとインスタントコーヒーのようなものです。保険が使える医療用漢方製剤として、148種類のエキス製剤が厚生省から認可されています。煎じ薬に比べて、煎じる手間が省けて携帯に便利という利点があります。

煎じ薬とは?

生薬に含まれる有効成分をお湯で煮出すことを「煎じる」といい、生薬の成分を煮出したスープ状の液を「煎じ薬」といいます。具体的には、おなべややかんなどで1日分ごとに分包してある漢方薬を水から火にかけ、煮詰めたのちに煎じかすを取り去った「煎じ薬」を1日に2-3回に分けて飲みます。ちなみに「煎じ薬」は保険が利かないと思われている方も多くいますが現在200種類以上の生薬が保険で使えます。エキス製剤に比べて手間がかかりますが、その分効果を実感できることが多々あります。

漢方薬は高い?

漢方というと値段が高いというイメージがあるようです。漢方エキス製剤には、医師の処方によって保険が使える「医療用漢方製剤」と、街の薬局でも売られていて、医師の処方箋がなくても気軽に買える「一般用漢方製剤」があります。「一般用漢方製剤」は保険が使えず、「医療用漢方製剤」より成分量が少なく、やや効果が弱くなっています。当院が処方する「医療用漢方製剤」は漢方薬の種類によって値段は様々ですが、1例をあげるならば、風邪に「葛根湯エキス」を5日間処方すると保険診療で3割負担の方ならお薬代は約110円です。

漢方薬の飲み方は?

エキス剤も煎じ薬も食前(30分くらい前)か食間に服用するのが原則です。空腹時の方が食事の影響を受けず吸収が早いため、効果が上がるからです。ただし、胃がもたれたり、食欲がなくなる時は食後に服用しても構いません。 エキス剤の場合はコップ一杯の湯に溶かして飲むか、顆粒を直接口の中に入れて水で飲み込みます。臭いや味でどうしても飲めない人はオブラートに包んで服用したり蜂蜜を加えて服用する方法もあります。

漢方の特徴は?

1)病気を全体としてとらえています。
現代医学でももちろん病気は全身的な影響を与えると考えますが、漢方では治療において異常の部位だけでなく、常に全身状態への配慮をしています。

2)「冷え症」に対する理解があります。
「冷え」は現代医学では病気ではなく、したがって有効な治療法がありません。
漢方では「冷え」は血行を悪くし、病気の治癒機転を妨げるとして非常に重要な概念と考えています。

3)「瘀血(おけつ)」と呼ばれる微小循環改善の具体的手法があります。
微小循環をよくして病気を治すという発想は漢方独特の治療観であるといえます。

4)「補剤」と呼ばれる生体の機能賦活剤があります。
漢方には弱った機能を賦活(活力を与える)する働きの処方が少なくありません。特に高齢化社会になって、補中益気湯・十全大補湯などの補剤の役割が注目されています。

どんな病気に漢方薬を使う?

【適応する病気・・・機能的疾患、自覚症状が主の疾患、他に治療法の乏しい疾患、比較的軽症例】
例えば、腹痛があって、CTや内視鏡検査をしても異常が見つからない。でも普通の薬を使っても良くならない場合のような過敏性腸症候群といった病気や他に治療法の乏しい疾患。虚弱体質とか現代医学的治療に反応の乏しい難病とかです。難病の場合はもちろん漢方を使ってもよくならないことが多くありますが、一度は試してみる価値があります。それに比較的軽症な疾患、たとえば風邪も良い適応です。

【不適応な病気・・・緊急度が高い疾患、重症例・手術適応例、漢方薬以外の治療法が確立しているもの】
漢方が向かない病気としては、緊急度が高い疾患や重症例・手術適応例などがあげられます。これは当然ですが、外来に心筋梗塞の方が来ても漢方で治そうとは考えません。あとは手術適応のある悪性腫瘍も漢方治療には不向きです。それに漢方薬以外の治療法が確立している疾患。ときどき漢方外来にも来られますが、一般的な精査が不十分で漢方外来に受診する患者さんがいます。例えば、筋肉痛やこわばりが続いていて調べてみると実はリウマチ性多発筋痛症という病気が隠れている場合もありました。こんな場合は患者さんにも説明して、漢方薬は使わずにステロイドを使って治療していきます。他には甲状腺機能亢進症が隠れていたりとかです。そういう意味ではまず、内科的精査や診断をしっかりつけるというのが漢方治療においても非常に重要になってきます。